乾杯の後に…

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女子だったから、仕事が詰まっていても徹夜に付き合わせることは避けたが、一緒に深夜まで残業することはザラだった。そうなると、やっと翌月分の入稿を終えた時期、少し早く帰れる日には一緒に会社を出て、軽く食べながら飲んだりもするようになっていく。 それはどこの職場でも同じだろう。男女を問わず一緒に苦労した同僚は、共に戦う戦友のような存在となっていくもの。その頃には聡も彼女を仕事上の右腕…ぐらいに頼りにしていたし、また気心の知れたパートナーでもあった。何よりも聡の仕事を理解し、社内での立場を気遣ってくれるのがうれしかった。けれどそれはあくまで信頼の置ける部下として…だったはずなのだが…。 基本的に聡の業務の場合、国内出張は編集者がひとりで行くことが多かった。撮影がある場合はカメラマンとアシスタント、撮影シーンによってはモデルとスタイリストやヘアメイクなどが一緒に行くことになるが、上層部から経費削減をうるさく言われている手前、編集部からはひとり…が原則となっている。だから国内の取材や撮影などで、聡と彼女が一緒に出張することはなかった。
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