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「ロビーじゃ書類や資料を広げられないだろ。いっぱいある資料を抱えて運んでるわけにもいかないし…。だから仕方なく、資料を置いてある方の部屋を使ってるんだよ」
「おかしいじゃない。だいたい男と女をふたりだけで出張させて、ホテルの部屋で打ち合わせさせるなんて…。そんなことさせる会社なの?…あなたの会社は! 大体このコもこのコよね、ホテルで男の部屋に行って平気でいられるなんて…。非常識な仕事をしてると、スタッフの人まで常識がなくなっていくのかしら」
彩は自分でも不思議なほどムキになっていた。
しばらく俯いて黙ったまま、彩の非難が自分の会社や部下の彼女、そして仕事にまで及んでいくのを聞いていた聡は、意外なほどアッサリと言った。
「たしかに、彼女と寝たことは事実だ」
予感はしていた。だから彩も驚きはしなかった。むしろいままで胸元につかえていた疑心暗鬼が、やっとスッキリした気がしていた。そして不思議と、あまりにアッサリとバラしてしまった聡を、この人らしい…と納得している自分がいた。
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