乾杯の後に…

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ただこの相手は、たまたまどこかでナンパした若いコや、仕事で店外デートしたキャバ嬢などではない。会社の同僚だったのがショックだった。通りすがりの相手なら、もう二度としない…と言わせれば目を瞑ってもいいような気もしていた。しかし彼女は、会社では日常的に聡と一緒にいる女性だ。何をどう約束させても、安心できるはずもない。 「それで、どうしたいわけ?…聡は」 「いま、彩と別れたい…とは思っていない」 「そう、聡はそれでいいかも知れないけど、アタシが許せると思う?」 「彩は大切なパートナーだ。だけどいまのオレを解ってくれるのは、彼女だけなんだ」 「人を裏切っておいて、何?…その言い分」 やっと、彩の中で怒りが湧いてきた。 「聡って本当に無神経ね。別れたくないなら、せめて相手に知られないように神経を使うべきなんじゃないの? 訊かれても誤魔化すか否定しなきゃ、アタシが傷つくと思わないわけ? その女と寝たって解っていて、アタシを裏切ったって解っていて、それでもアタシが一緒にいられると思うの? 聡ってどういう神経しているのよ!」 「裏切った…そう言われてしまえば、否定はできないけど…」
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