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「そんないい加減な相手なんかと、一緒に暮らせないよ!」
心の中に染み込むように、怒りが拡がっていく。俯いたまま自分と眼を合わせない聡に、すでに彩は嫌悪感すら抱いていた。
「もう、生理的に無理だから」
「………」
「汚らわしくて、触れられるのも嫌! もう顔も見たくないし、一緒の部屋で同じ空気を吸っているのも嫌!」
そのまま自分のハンドバッグとスマホを掴んで、彩はマンションを飛び出した。先の事は考えていなかったが、本当に一緒の部屋にいることすら許せなかったのだ。
実家に帰った後、幾度も考え、悩んだ。怒りが静まってきて、落ち着いて考えてみると迷いも生じてくる。
もし本当に、たった一度きりの過ちだったとしたら、それで別れるなんて我儘すぎるんじゃないだろうか…。でも、だからと言って、聡を許せるだろうか。時間が経てば、この心の中のわだかまりは消えていくものなんだろうか…。
それより、本当に自分は聡と別れたいのだろうか…。このまま別れてしまって、後悔しないだろうか…。
悩んでも、悩んでも、結論は出なかった。
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