乾杯の後に…

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「アレ、もう終電車、行っちゃったみたいだよ」 「やだ…もうこんな時間? どうしよう…でも飲み過ぎちゃったみたい」 「とりあえず出ようか…」 バーテンを呼んで支払いを済ませると、ふたりとも黙ったまま店を出た。 「ちょっとだけ、寄っていかない?」 顔を上げると、眼の前の路地の奥にホテルと書かれた看板が見えた。 予感がなかったわけではない。だからバーラウンジの店内にいた時から、その日の朝に身に着けた下着を頭の中で反芻していた。 「いいですよ…先輩は気付いてなかったかも知れないけど、学生の時から先輩のこと、好きだったから」 「オレだって結構意識してたんだぜ、君のこと…」 狭い路地に、不自然に煌めく幾つものホテルのネオン。 「最近はあんなラブホテルのことを、レジャーホテルとか、ブティックホテルとか言うらしいね」 「どんな意味なんでしょうね…ちょっと覗いてみたいかも」 照れ隠しの無意味な会話…心の中ではそう思っているのに、声がうわずっている。 「ここでいいかい?」 坂道を登りきったところにある一軒の前で立ち止まり、彼は念を押すように言った。 黙って頷く。
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