乾杯の後に…

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土曜日の昼下がり、幾度か聡と行ったことのあるカフェだった。先に来ていた聡は、遅れて来てテーブルを挟んで座った彩に、今度新しく創刊する雑誌の話ばかりをしていた。そんな聡を遮って彩は結論を促す。 「それで、今日は何が言いたくて逢おう…って言ったの?」 少し間をおいて、聡は言った。 「もうやめよう。このまま一緒にいても、お互いに不幸になるだけだと思う」 ちょっと前の彩ならその聡の態度に、あまりに自分勝手とキレていたはずだ。どうして自分のしたことを反省し、頭を下げて謝れないのか。どうして関係を修復するために、精一杯努力できないのか。けれどこの時は、彩自身もまた心の内にいままでとは違う自分を抱えていた。だからなのかも知れない。自分でも意外な言葉が口を突いて出た。 「いいよ、もう…いい。アタシもね、この前、大学の時に好きだった先輩と寝ちゃった」 聡の顔に驚きが浮かぶのを確認して、言葉を繋いだ。 「ホラ、結婚前に話したことがあるでしょ。初恋の人。焼けぼっくいに火が付いた…って言うのかな。久し振りに逢ったら、燃え上がっちゃったみたい」
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