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リビングにはピンクとブルーの付箋が貼られた段ボール箱が積まれていて、それぞれの色の段ボール箱を作業員が台車で運び出し、別々のトラックに載せていく。ピンクは彩、ブルーは聡の荷物。
家具はふたりでリストを作り、ふたりで話し合って分けた。入居する時、どちらの予算で購入するか、ふたりで話し合って決めたように…。
ピンクの付箋を貼られた段ボール箱が、彩の視界を横切って運び出されていく。その箱の中身は、彩が結婚前に聡のアウトドアの趣味に付き合うために買ったマウンテンパーカーやオーバーズボン。「もういらない」…と言いたいのだけれど、さすがに「持って行ってよ」…とは言えなかった。
もし聡が自分の時と同じように、その部下の女のコをキャンプに連れていくなら、そのコに役立てて欲しかった。決して嫌味でも嫌がらせでもなく、素直にそう思えていた。
けれど彩も、すでにそんな想ったままを口に出すようなことはなくなっていた。そのコのサイズが解らないから…とか、そのコも貰っても嫌な顔をするだけだろう…と言った理由ではなく、もう聡との間が想ったことをそのまま言える距離ではなくなっていたのだろう。
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