乾杯の後に…

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たぶんベソをかいて立ち尽くす男の子の姉なのだろう。男の子の方は、勢いよく転んだ割にはどこかを強く打ち付けた様子もなく、手足に擦り傷も見当たらない。 落とした紙袋を拾い上げてやると、その袋の中を覗き込んで女の子が言った。 「でもどうしよう…ママのワイン、割れちゃった。もうお小遣い、残ってないんだよ」 そうか…今日は母の日か…。 やっと聡もこの日が五月の第二日曜日で、母の日であることを想い出した。 …という事は、眼の前でポタリ、ポタリと雫を滴らせ、路上に赤いシミを作っている紙袋の中身は、この姉弟が母親に贈る母の日のプレゼントだったわけだ。 「仕方ないね。オジサンがこのワイン、何とか交換できないかお店の人に頼んであげよう」 助け起こしてしまった行きがかり上、このまま放って置くわけにも行かないだろう。聡はそう思って紙袋をブラさげた姉弟を連れ、彼らが出てきたリカーショップに入った。 「悪いんだけど、さっきこの子達が買ったワインと同じ物がありますか? いまそこで転んで、割っちゃったみたいでね」 「アラアラ、怪我はしなかった? 仕方ないわねぇ」
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