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「そうじゃなくて、あの子達のためにならないんじゃないかって言ってるの。何か買った後で割ってしまったら、もう一度買うか、諦めるしかないって教えるべきよ。割れても店で交換してくれるなんて思い込んじゃったら、後々困るのはあの子達自身でしょ? …もういいんだけどさ、やめよっ…こんな話」
あ~どうしていつも、こうなっちゃうんだろう…彩は溜息をついた。
そう、いつ頃からだったろうか、こうしてふたりでいるといつもモメて、後味の悪い想いが尾を引くようになってしまったのは…。
もちろん激しい言い争いや、互いに手が出るようなケンカになった事はない。たいがいは聡が黙ってしまい、イラついた彩の文句を聞き流して終わるだけだったが…。それでもしばらくは彩の機嫌は直らないし、聡も彩に対して何かを言う気が失せてしまう。
そうして互いに行き違った時間は次第に堆積し、ふたりの間に重く沈殿していく。そしてある時、気が付いたらふたりの距離は、取り返しが付かないほど離れてしまっていた。
結局、そんな日々に堪りかねて、ふたりが到達したのは「離婚」という結論だった。
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