乾杯の後に…

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それでも付き合い始めた最初の頃は、聡の趣味だから…と一緒にキャンプへも行った。自分が一緒に行かないと、他の女性と行かれてしまいそうな気がして不安だったこともある。けれどそれ以上に、聡のキャンプ仲間達に彼女として紹介してもらう意味が大きかった。彼氏を自分の元に繋ぎ止めるには、まず彼氏の仲間に自分の存在を公認されること。そう姉に教えられていたから…。 「エ~ッ、キャンプ? いいなぁ…アタシも連れてってよ」 「でもさ、オレ達のキャンプって、バンガローやキャンプ場みたいな整備された施設に行くんじゃなくて、山の中の何もない所にいくんだけど…」 「大丈夫だよ。アタシだって少しは経験あるし、飯盒で炊いたご飯っておいしくって好きだよ」 そんな彩のかわいい嘘は、すぐにバレた。出発当日に彩が持ってきたのは、目いっぱいに何かを詰め込んでパンパンに膨らんだブランド物のボストンバッグ。驚いた聡が中身をチェックすると、出てきたのはヘアドライヤー、メイク用の化粧品セットと照明付き鏡、ネールセット、バスソープ、サンドレス等々。サンダルも入っていたが、もちろんそれもビーチサンダルなどではなくヒールの付いた華奢なもの。
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