乾杯の後に…

「あのさぁ、これから行く所って、電気のコンセントがない所なんだけど…」
「ウン、知ってるよ。夜になったらランタンの明かりを灯けるんでしょ」
「だからさ、ヘアドライヤーとか電気で稼働させるものって使えないんだ」
「ヤダ～、じゃシャワー浴びた後って、どうやって髪乾かすの？」
「………」

結局、荷物の大半は聡のアパートに置いていく事になった。
けれど「後から追いかける」と仲間達に連絡して出発を半日遅らせ、足りない物を買いに近くのショッピングセンターへ一緒に行ってくれた聡はやさしかった。アウトドア用のブルゾンやコッパン、スニーカーを選んでくれて、サイズやフィット感まで細かくチェックしていく聡を頼りになると思えたし、そうしてもらっている事で大切にされている姫のような気分も味わえた。もっともその間に延々と語ってくれたアウトドアの知識と蘊蓄は、少しも理解できずに右から左へと聞き流したけれど…。