乾杯の後に…

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そうして聡とキャンプ仲間達が作ってくれたトイレはキャンプサイトの裏手のちょっと離れた場所の砂地をシャベルで掘って、その穴の底に携帯トイレ用のシートを敷き、上に便座の椅子を置いた簡単なもの。けれども聡の仲間がその周囲に支柱を立て、フライシートという防水シートを張って壁と天井を造ると一応は小屋らしい体裁になり、外から見られる心配はなさそうだった。 最近の携帯トイレのシートは抗菌防臭機能に優れていて、排泄した後に封をしてパックしてしまえば臭いすら漏れない。排泄したらその都度、シートをパックして廃棄物用のゴミ箱に捨てればいいだけ…と聡から説明を受けると、「フ~ン、意外と清潔で合理的なんだ」と感心もした。なによりも自分の排泄物を次に使う人に見られる事もない…という事が解ると、彩も安心できた。 けれど最初にトイレを使おうとしたとき、彩は何もできずに聡の所に戻って来て、耳元でそっと訊ねた。 「ねぇ、あれって鍵はどうやってかけるの?」 「いや、もともと鍵なんてないんだ」 「じゃさ、後から誰か来ちゃったら、どうするの?」
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