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「ここにいるみんなにひと声をかけて行けば、彩が戻ってくるまで誰もトイレの方へは行かないさ」
「それってみんなに『トイレ行きます』って宣言しなきゃなんないってことなわけ?」
「うん、決まりじゃないけど、何となくそんなルールになってるんだよ」
「………」
ルール…と言われてしまえば何も言えないが、彩にとっては知り合って間もない男性達に自分がトイレに行くことを大声で言いふらして廻らなければならないのは、かなり抵抗があった。そんな彩を察して聡が「使用中」と書いたプレートを作って、トイレの外にかけてくれた。かなり大きなプレートで、遠くから見ても誰かが入っていることが一目で判る。それもまた、まるで自分が排泄していることをわざわざ看板を掲げて宣伝しているようで抵抗はあったが、逆にそれが掲げられていればみんな遠慮して近くを通らないことが解ってからは、聡の思い遣りに感謝していた。
事件が起きたのは最初の一日が終わって、生まれて初めてテントの中で寝袋に入って眠って、翌朝を迎えた時だった。
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