乾杯の後に…

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木の枝に刺して軽く焚火で炙ったチーズとバケット。アウトドアの料理人を名乗るキャンプ仲間が作ってくれたフワフワのオムレツ。飯盒の蓋をフライパンにしてカリカリに焼いたベーコン。朝の湖畔の空気までおいしくて、たっぷり食べるとちゃんと便意が訪れた。 トイレへ行って使用中のプレートを掛け、中へ入る。便座に座ろうとすると、下の穴が随分と拡がっていることに気付く。昨夜、キャンプ仲間は入れ替わり立ち替わり、このトイレを使っていた。砂地に掘った穴だから、固めてはあっても繰り返し使えば徐々に側面の壁が崩れて拡大していく。足元の砂も少し軟らかくなっているような気がして多少の不安はあったが、便意を我慢するわけにもいかず、便座に座った。 すると座っている内に少しずつ足元の砂が崩れていく。周囲を見ると便座の椅子の脚はかろうじて穴の際に引っかかっているだけ。これ以上、便座に彩の体重がかかると、椅子ごと穴に転げ落ちそうだった。仕方なく彩は懸命に腰を浮かして中腰になり、スクワットの姿勢で耐えようとするのだが、体重がかかると今度は彩の足元の砂まで崩れ始めた。
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