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ズバリ当たっていた。結婚式と新婚旅行、そして新居への引っ越しと立て続けに散財しているのだから、新婚生活が緊縮財政になるのは仕方のないこと。それに加えて結婚したカップルの多くがそうであるように、ふたりで暮らし始めると殊更にデートする必要もなくなるから、理由がなければ外出しなくなる。そんな日々に彩もそろそろ退屈し始め、何かイベントが欲しかった所だったから飛びあがって喜んだ。
叔母の知り合いが経営する小さなレストランで催される、弦楽四重奏の夕べ。当時はやり始めたプライベートで開催するミニ・コンサートである。
「ねぇねぇ、洋子伯母さんがコンサートのチケットをプレゼントしてくれたの。フレンチのディナー・コース付きだよ。来週の日曜日。聡も日曜日なら大丈夫でしょ。ねぇ…行こうよ」
「ウ~ン、日曜かぁ…」
たまに一緒に買い物へ出かけたり、彩の実家へ行くことはあっても、それ以外はほとんどふたりで外出しなくなっていたから、彩は是が非でも聡を引っ張り出すつもりだった。彩にしてみれば新婚旅行以来の久しぶりのデートだったのだ。
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