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あれからもう四年が経とうとしている。それは聡にとっても、彩にとっても、けして短い時間ではなかった。少なくともいまは、当時よりは醒めた目で相手を見て、そして自分を振り返る事ができるようになったのだから…。
「昔よく行った、角のビルの店でもいい? この時間ならまだハッピーアワーが始まったばかりだから、空いてると思うんだけど…」
「ああ、あの店? 結婚してた頃はよく行ったわね。まだあそこに通ってるんだ」
結婚前からよくデートで使っていて、結婚してからも待ち合わせ場所に使っていたアイリッシュ・パブ。別れてからも、聡は毎週のように飲みに行っていたが、彩は遠ざかっていた。
聡にしてみれば、相手を嫌いになって想い出すのも厭で別れたわけではないのだから、通う店を変える必要を感じなかっただけだが、彩にしてみれば、別れた相手と一緒に行った店に通い続ける事が理解できない。
以前はそんな聡が無神経に思えて、彩はいつも苛立っていた。結局別れることを選んだ理由のひとつも、その無神経さが我慢できなかったからだ。けれどいま振り返ってみると、それが離婚するほどの理由だったのだろうか…とも思えてくる。
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