乾杯の後に…

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けれどもたしかに聡は音楽、それも洋楽が好きだったが、それはロックの話。ハードロック系バンドのファンで、クラシックはほとんど聴かないし、よく知らない。でもせっかく彩が慕っている叔母が、彩のために「たまには一緒に食事とイベントでも楽しんできなさい」と言って用意してくれたデートである。聡にしても素直に受け取らないわけにはいかなかった。 当日、普段は会社へ出勤する時でさえカジュアルでトレーナーやブルゾンしか着ない聡も、一張羅のスーツを着た。結婚式の時のタキシードもレンタルで済ませていたから、本当にスーツはその一着しか持っていなかったのだけれど、会場が叔母の知り合いのレストラン…となると、叔母に恥をかかせないためにも引っ張り出して着るしかなかった。慣れないネクタイで首を絞めるととても窮屈で、息苦しい感じはしたけれど…。
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