乾杯の後に…

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コンサート会場となるレストランは郊外の高級住宅街にあった。店内はシックで重厚感のあるインテリアで仕立てられているが、天井の高いフロアはちゃんとアコースティックの楽器の音響を考えて設計されているようで、小さな音でもよく響く構造になっていた。奥に一段高くなったステージがある。店員に叔母からもらったチケットを見せると、そのステージの正面で最前列のテーブルに通された。かなり高額のチケットだったらしい。 ディナーショウ形式で前半の一時間半はディナータイム。チケットのコースにはボトル・ワインも含まれているとのことで、ワインリストを渡された。数種類の中からアルゼンチン・ワインを選ぶ。聡もワインに詳しいわけではないからヤマ勘だったが、店員が眼の前でコルクを抜き、テイスティングを促したそのワインはとても爽やかな香りがした。氷を満たしたワインクーラーにセットされて冷えて来ると、いっそう爽やかさが際立ってくる。彩も気に入ってくれたらしく、指で丸印を作って「ナイスチョイス」と囁いていた。ちょっと暑い日だったせいもあるのだろう。喉を潤す感触が心地いい。
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