乾杯の後に…

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人を招いた時も、彩はできたての手料理にこだわった。次に出す料理を作りながら、同時並行で前の料理の後片付けをし、時にはキッチンのカウンターを挟んで客と話をしながら、客のグラスに注がれたワインの残量に目を配る。目が廻るぐらい忙しかったが、彩にとってはとても充実した時間だった。ひとしきり数種類のオードブルを出し、みんなが集まっているテーブルに行く。するとたいがいの客はインテリアの趣味を褒めてくれたし、新婚旅行の時にタヒチで買ったテーブルウェアの話題で盛り上がった。学生の頃からの友人達は、初めて訪れた客達に彩が集めたファッション誌やインテリアの本を見せて話題を繋いでくれたし、部屋の各所に配した小物類や写真の話でも盛り上がった。だから人が集まって賑やかに談笑を愉しめるリビングルーム…という彩のこだわりは見事に成功したと言えるだろう。もちろんホスト役の聡は、その日のために用意したワインの栓を抜いてみんなのグラスに注いで廻るから、彩が望んだ理想の新婚生活と夫婦像も見事に描かれていた。
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