乾杯の後に…

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そしてタイマーが鳴ってキッチンへ戻ると、オーブンの中で主菜の丸鶏が焼き上がっている。トレイに盛り付けてテーブルへ運ぶと、思いっきりゴージャスな光景になった。周囲に林立する客のグラスがシャンパングラスではなく、ワイングラスなのが惜しかったけれど、インスタ映えする派手さはほぼ満点と言えただろう。談笑する客たちを背景に写真を撮り終えて、こんがりとキツネ色に焼けた丸鶏をみんなに取り分けると、誰もが「おいしい」と褒めてくれた。 この日のために数日前から素材を買い込み、料理本やネットのレシピを見ながら幾度か試作を繰り返し、聡を実験台にしてきた成果である。招かれて訪れた客が「まずい」などと言うはずもないのだが、客達はラージサイズの丸鶏をキレイにたいらげてくれたから、あながち彼らの「おいしい」もお世辞ではなかったのだろう。
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