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夫婦で役割分担している手前、それでは聡に申し訳ない。そう思って彩は言う。
「アッ、じゃアタシがやる」
「いいよ、せっかく盛り上がってるんだから、彩はここにいなよ」
正直、うれしかった。「いまはこの場を外したくない」と思っている自分を察して、フォローしてくれる夫。「やっぱりこの人と結婚してよかった」…そう想えた一瞬だった。
「エッ、でも大丈夫?」
「大丈夫…冷蔵庫の中のもので、適当に作るから」
彩の脇に座ってその会話を聴いていた学生時代の友人が、「キャッ」と歓声を上げた。
「わっ、いいなぁ…彩。アタシ、そんな夫婦の会話って夢なんだぁ…」
彼女が連れて来た職場の同僚も同調して言う。
「いいよねぇ…。なんか、ドラマの中の世界みたい」
そして、その同僚と連れだって来た彼氏がいった。
「かなわないなぁ…。また将来の夫婦生活のハードルが上がっちゃったよ…」
リビングが笑い声で包まれる。聡はニッコリと笑顔を振りまいてキッチンへ行った。
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