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「藤原くんとお付き合いしたいです。よろしく、お願いします」
そう言い終わるかどうかのタイミングで、藤原くんはわたしに向かって倒れ込んできた。
彼の体を支えきれずに、わたしたちふたりはソファに勢いよく倒れ込む。
「よ、よかった。この流れ、絶対断られる流れだと思って覚悟してたら、なんだこのどんでん返し。こんな展開、ドラマだけで十分だって」
わたしの体の上で藤原くんは、くつくつと笑い出した。わたしの顔に彼の洗いざらしの髪がかかり、くすぐったい。
「さすが、宗平東吾の娘。俺、すっごい振り回された」
ここまで言って、藤原くんは顔をあげ「あっ」と小さく息をもらす。
「ごめん、こんな言い方されるの嫌だったよな」
以前は高徳院で父の娘と言われ顔がひきつったけれど、今はそれどころじゃない。
「わたし、やっぱり父の娘だね。男の人を振り回すことができるなんて」
ちょっと余裕のある悪い女ぶってみたけれど、わたしの心臓は限界でパンク寸前だった。この痛いくらいの胸の鼓動は、きっと藤原くんにも伝わっている。
だって、わたしの胸の上に重なっている彼の心臓も、早鐘を打っているのがわかるから。ふいに藤原くんは、わたしの瞳をのぞき込む。
「振り回すのは、俺だけにして」
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