プロローグ

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プロローグ

 目を開けると部屋は明るく、リビングから物音がする。昨日、仕事で一日出かけていたお母さんは、帰ってるみたい。  わたしは昨日の夕方遅くに吹奏楽部の練習から帰って、ひとりでお母さんの用意した夕食を食べた。お母さんが仕事の合間に帰宅してつくっておいてくれたので、ラップがかけられたオムライスはまだほんのり温かかった。  夜の十一時までリビングで夏休みの宿題をしながらドラマを見てた。  不倫もののドラマはどうしようもなくつまらなくて宿題ははかどったけど、連日のハードな練習にだんだん眠たくなってきた。  ドラマが終わるとさっさとベットにもぐりこみ、眠りに落ちた。だから、お母さんがいつ帰ったかわからなかった。  翌朝、朝寝坊したわたしがキッチンのドアを開けると、コーヒーの苦い香りが漂ってきて、一気に目が覚めた。お母さんがソファに座り、右手にマグカップを持ちながら新聞を広げてた。  いつ、帰ってきたのだろう? 「おはよう。っていうか、こんにちはの時間だよ。ゆっくり寝てたってことは、今日は部活ないんだね」  お母さんは弾んだ声を出した。 「うん、お盆だから一日だけ休みだよ」  カウンターに置いていたスマホの画面を見ると、もう十一時になっていた。
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