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「やっぱ無理、こんなかわいいこと言われたら。いますぐどうにかしたい」
……どうにかって、どういう意味だろう。でも、今のタイミングで聞かない方がいい。それだけは、わたしでもわかる。
かわりに、今の気持ちを伝えることにした。
「藤原くんって、王子さまだなって今日あらためて思った。わたしと住む世界が違うなって」
「はっ? いや、俺庶民だし」
あきれた声が、わたしの胸にしみる。六年前だと思い込んでいたあの非日常の世界だったから、わたしは藤原くんとの距離を縮められた。
魔法がとけた日常に戻ればミスターキャンパスの藤原くんと、自分の違いが気になってしょうがない。
「でも……藤原くんに気後れするのは、わたしに自信がないからかなって」
わたしは藤原くんの胸板を押して、隙間をつくると彼の顔を見あげた。
「わたしね、大学の吹奏楽部に入ろうと思う」
「なんで、ここでいきなり吹部の話? なつの話がまったく読めないんだけど」
「だから、これからはいろんなことに挑戦しようってこと」
わたしは、藤原くんの腕の中から抜け出ると深々と頭をさげた。
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