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地球を守る5人の戦士。5人にはそれぞれイメージカラーが設定されており色にはそれぞれの性格が反映されている。レッドは熱血漢、ブルーは冷静、イエローは明るく、ピンクは慈愛、そんな具合に。
俺が目を覚ますと2人目の覚醒者は嬉しそうに説明してくれた。なんでも地球人が俺達を理解するにあたってそう演じるのが分かり易いのだという。
「だから私はピンクです」
2人目の覚醒者はピンクと名乗った。
「そして彼はブルー」
3人目の覚醒者はブルー。
「それってあんたが戦隊ものにはまってるだけじゃない? 」
「シャラップ! イエロー!」
1人目の覚醒者はイエローと名付けられていた。
イエローはピンクに「べっ」と舌を出して見せる。
「戦隊なんてお子様の趣味よ。大人は黙ってライダーよ」
「今のライダーはメタルヒーローじゃないですか? 」
「だからいいんじゃないの。枠にとらわれない自由さがあるわ」
「私としては戦隊が私たちと同じ5人というところに運命的なものを感ずにはいられません」
はたして戦隊とはライダーとはメタルヒーローとは何なのだろう?
地球に派遣される際、地球の生物の生態については一通り学習してきたはずだがそんな情報はどこにもなかった。
「戦隊というのは何だ? 」
「それは魂の叫びです」
「魂というのは何だ? 」
「それは愛の鼓動です」
「愛というのはピンクのことか? 」
「愛とは地球で最も尊い概念です。そしてそれを象徴するのが私。つまり私こそアース! 」
「…? 」
俺は聞いても無駄と判断した。
俺はまだ目覚めたばかりでピンクの言っていることはよくわからなかった。けれど自分の使命はよく覚えている。俺達は俺達に与えられたパーソナリティに従って地球を判定しなくてはならない。
俺達は地球人のように個人での性格というものを与えられていなかった。俺達と人間達では生命の在り方が違うのだ。個々に考え個々に人格を持つのが人間だが、俺達は集団で一つの意識を持っている。集団の人格は非常に複雑であるためその一部を別々の個体に分散させる。そうやって俺達は別々のパーソナリティを与えられる。雑多な意識を一つの人格に処理させては偏りが生じてしまうし思考を統一していては真理の探究に不向きだ。多種多様な意見を本気で信じる個体が意見し合うことによりより高度な思考が可能となる。俺達のパーソナリティはそのために与えられていた。パーソナリティはあくまで仮の物だったが例え与えられたパーソナリティでもそれを演じていればそのパーソナリティにひっぱられた個性のようなものが芽生える。それは本来の役割の邪魔になる可能性があるためあまり好まれてはいなかったが集団の中で逸脱しない限りにおいては許容されていた。
「愛あるゆえに地球人もまた我々と同じ進化をたどる可能性があります。私達は地球人を滅ぼさなくてもいい。とても素晴らしいことです」
ピンクは上機嫌でそう付け加えた。
なるほど愛というのは人間が進化の過程で会得した生活習慣もしくは文化のようなものであり生命に必須なものではないということなのだろう。同様に戦隊もライダーもメタルヒーローも似たようなものなのかもしれない。
「それはつまり地球人は滅ぼすべき種であるということは認めるということか? 」
「よい質問です。さすがはレッド」
4人目の覚醒者、つまり俺はレッドと名付けられたようだ。
俺は集団においては意見を集約する役割を与えられている。俺達が集団として逸脱した個性を持たぬように統率する監督者だ。ピンクの言うところのリーダーにあたる。故にレッドだ。俺は別に熱血漢のパーソナリティを与えられているわけではないのだがピンクが言うにはリーダーというものは熱血漢であろうとなかろうとレッドがなるものと相場が決まっているらしい。最初の定義と矛盾しているが事実なのだから仕方ないのだとピンクは言った。
「いずれ我々は地球人を滅ぼさなくてはならなくなるでしょう。そこに疑いの余地はありません。時間の問題です。しかし! バット! ハウエバー!」
ピンクは自分に酔いしれるように言った。
「愛がそれを変える可能性を秘めています」
俺達が地球を訪れたのは地球人を選定する為だった。地球人が外宇宙の文明にとって害になるか否かを選定して、いよいよ危険となれば滅ぼすことになる。俺達は太古の昔より地球人を監視し危険の程を調査しているのだ。だがそれは今すぐではない。将来的には滅ぼすことになるだろうが地球の科学レベルは我々に脅威になるレベルには達していないから脅威になるまでの間、時間的な猶予があった。
「ピンクはその未来を変えたくて地球人といろいろ接触を試みているみたい」
イエローが補足して説明した。
「なに…?」
俺はあまりのことに一瞬呆けてしまった。
「現地人への干渉は重大な違反だ。現地人はあくまで自分の意志によって進化しなくてはならない。ピンクが地球人と接触したというのなら俺は君を罰しなくてはならない」
俺は腕のデバイスに手をかける。集団としての意志に個人が著しく反したとき、それを裁くのがリーダーとしての俺の役目だ。そしてピンクは明らかにこれに抵触している。デバイスはそれを補助する装置。個体個体で傷つけあわぬようにオミットされた力を解除することができる。
『レッドチェンジャー』
デバイスから妙な音声が流れ、俺は赤い仮面に全身タイツの奇妙な格好に変わった。
「なんだこれは…」
勿論デバイスにそんな機能はない。デバイスを発動すれば高エネルギー体へと変化するはずだ。こんな奇妙な格好に変化するための装置ではない。
「素晴らしい! これぞ私がみんなより先に目覚めてから心血を注いで作り上げた輝かしい戦隊の姿です」
ピンクが胸を張った。
「先に目覚めてやっていたのがこれなの? なんと無駄なことを」
ブルーが覚めた瞳で突っ込んた。
「戦隊ってやっぱりちょっと貧弱なのよね。やっぱりこっちのほうがいいと思うわ」
『ブースト』
イエローがそういうとデバイスからもう一度音声が流れ全身タイツの上に鎧のようなものが装着される。
「その姿でいられるのは5分間よ。5分を過ぎれば身体に負荷が限界を迎え全身の穴という穴から出血してしぬわ…」
「…」
なんだこれは全く理解が追い付かない…
このデバイスはオミットされた能力を解除するためのもの。使用者の生命に危険を及ぼす機能などついてはいない。勿論あるはずがない。もしそんなものをつけたとするならそれは純粋な危険行動、敵対行為に他ならない。
「イエローのやったことは悪ふざけの領域を超えている。デバイスは我々の力を解除する大切装置だ。それに使用者に危害を加えるような処置を施すことは単に姿を変えるというピンクの行為とは比較にならぬ危険なものだ」
「じょ、冗談よ。冗談」
イエローが慌てて弁明する。
「そういう設定の方が燃えるかなと思っただけよ。やったことはピンクの方が悪質よ。そのデバイスの廉価版を地球人に渡したのよ。私はたんに同じ姿じゃ地球人と紛らわしいからメタルヒーロー風になれるようにちょっといじっただけよ」
「デバイスを、地球人に渡した? 」
俺はもう怒りで頭がどうにかなりそうだった。俺達は地球の裁定者。気概も利益も与えてはいけない、それをあまつさえ俺達の種族の技術を提供しただと?
「…」
落ち着け落ち着くのだ。俺は必死に自分を諫めた。本来俺達に怒りなどという感情はない。与えられたパーソナリティに付属している一部品に過ぎない。そんなものに惑わされてはいけない。俺は何とか平静を取り戻す。
「それは本当なのか? 」
なんとか平静を取り戻した俺は聞く。顔が強張っているのが自分でも分かったが仕方がない。
「地球人はムーンレイスという未曽有の危機に瀕していたの。私は彼らを救うために仕方なく…」
ピンクは目をそらしつつ早口で答える。なんだそのあからさまに怪しい反応は
「どうせそれもお前の差し金だろう? 現地人と接触したばかりか我々の技術を漏らすなど。ことは君の与えられたパーソナリティを奪うだけでは済まない。その根本となったエラーを発見し速やかに排除しなければ…」
俺はピンクのパーソナリティはおろかその元となった集団人格の一部から消去すべきであると結論付けた。明らかに俺達という種族に害を及ぼすパーソナリティだ。多様な意思を許すとどうしてもこう言ったものが迷い込むのだ。可及的速やかに消去した方がいい。
「待ってください」
それを慌てて止めたのはブルーだった。
俺達4人には異なるパーソナリティが割り振られている。個々のパーソナリティによって判断が鈍らぬように1人が不当に排除されぬように。ピンクが少々パーソナリティとして幅がある適応性を有しており孤立しやすいのは分かっていた。だからブルーは彼女が孤立しないようなパーソナリティが付与されている。2人はつがいになるという関係性が付与されている。ブルーはピンクに好意的になるよう肯定的に施行するようプログラムされているのだ。だからピンクを守ろうと行動しているのだろう。
「我々は選定に適するように雑多なパーソナリティを付与されています。ピンクが地球人を滅ぼさぬような個性を持つならば我々が滅ぼす個性を持つべきです。そうすることによって集団は完璧たらしめることができます」
「そんなことをして何になる? 集団として適正なものを集めなおし新たな選定者に判断させた方が適切な判断が可能だ」
「しかしピンクは既に地球人に援助してしまった。もうすでに地球人に接触している。その時点で今から新たな選定の者を集めなおしても公平な選定になりえない。ピンクとの接触をなかったことにはできないのだから別の選定者が地球人の消去を判断した場合それはピンクに影響された地球人を選定することになり純粋な地球人を選定したことにはならない」
「どっちにしろ地球人は滅ぼすことになる。ならば同じだ」
「いえ、ピンクが地球人と接触したことにより僅かにあった地球人生存の可能性がなくなり地球人を滅ぼさなくてはならなくなりました。同じではありません」
「ピンクが地球人に良かれと思ってしたことが地球人を滅ぼす結果になるということだな。皮肉なことだ」
「皮肉なことではありません。それでは我々集団の意志ではありえない。集団の意志が集団の意志足り得るためにはこのまま選定を継続するしかない。ピンクに影響される前の地球人を知るのはピンクないし我々選定団だけです」
「常軌を逸しているとはいえピンクの意志は集団の意志の一部だ。その欠片は後の選定団にも引き継がれる」
「そう判断するにはピンクの行動はあまりにも集団の意志から逸脱しすぎています。なぜそうなったのかを含め我々は地球人を選定しなくてはならない」
「ピンクの暴走は地球人との接触に引き起こされたと? 」
「我々の意志がピンクのような行動を許すはずがない。ならばそれは地球人との接触で引き起こされた可能性は高いと言わざるを得ない」
俺は忌々しげにピンクをを見つめる。
「お前は我々でなければ地球人を選定できなくさせるためにわざと地球人に接触したのではないのか? 」
「い…一体何のことでしょう?」
明らかに動揺するピンク。どうやら図星のようだ。
「そんなことをしても無駄だ。たとえ俺がそれを許したとしてもいずれ目覚めるであろう5人目の覚醒者は集団の意志を忠実に反映する者だ。俺らりが公平足らんと至った答えを集団の意志と照らし合わせそこで合否を判定する。地球は滅ぶことになる。いや、それだけではない。集団の意志から逸脱した答えを出せば我々事態が裁かれることになる」
我々は5人1組みで行動している。だが5人目はいまだに目覚めてはいない。遥か遠くの外宇宙から眠りについて我々は地球をはじめとする観測地へと送らられ1人1人と目覚めていき、5人目が目覚めたとき選定が始まる。4人までが目覚めているということは選定の時は近いということだろう。
結局のところ結論は5人目の覚醒に持ち越された。思考体系にはイエローがより乱雑でありそれに沿う形でピンクが乱雑になりそれに対抗するのが俺で擦り合わせを行うのがブルーの役割ということになる。また俺の意見をピンクに擦り合わせるのもブルーの役割となる。ブルーが目覚めたということは我々の地球への審判の日が近づいているということだ。だがブルーはピンクに好意的である以上ピンクの意見が通りやすくなる。俺達も星を滅ぼすなどという行為はできればしたくないが故の過程なのだろう。ブルーが地球人について決定的な決別をするまでしばらくの間現状が維持することになるだろう。
・・・
「ムーンレイスは倒したのに、どうして…」
小学校低学年と思しき少年と少女が呆然と宙を見上げた。
「ああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
声にならない叫びが響き、巨大な埴輪が町を破壊しまわっている。
埴輪、そうそれが何に一番近いかというと埴輪だった。シンプルながら甲冑のようなものをつけてお面のように簡略とした目と口と鼻が顔に張り付いている。ただ埴輪と決定的に違うのはその大きさとそして材質だった。今街中を暴れまわっている埴輪は何らかの植物でできているようだった。それらは今なお生きているように急激に蔦を伸ばしてあたりを侵食してもいた。
「英雄。あれ泣いてるの?」
月乃が少年の袖を引っ張った。確かに埴輪の目に当たる部位からは水のようなものが流れ落ちていたがそれを泣いていると形容するのは幼子の発想力によるところが大きいだろう。
「そんなことより早く逃げないと」
英雄は月乃の手を握ると逃げ場所を探すが辺りは地獄絵図となっていた。倒れたビルの瓦礫が絶えず上から降り注ぎ、潰された人間の遺体が放置されている。誰もそれを気に掛ける余裕などなく逃げ惑っている。
ビルの下に隠れても埴輪はビルそのものを破壊するのだから意味はない。蔦はビルを確実に破壊しているのだから返って危険とも言えた。それが人々を一層混乱させているようだった。
「デバイスがあれば…」
英雄は思わずつぶやいた。
地球を狙うムーンレイス。彼らから地球を守る外宇宙の戦士質がいた。英雄達は偶然彼らに助けられてから縁を持つ間柄となっていた。いや縁どころではない地球人代表としてグリーンデバイスをもらいグリーンとして共にムーンレイスと戦った仲だった。グリーンに変身している間は大人の身体を手に入れることができた。
ムーンレイスは獣みたいなもので意志を持たない。ただその女王が全ての意志を統率している。女王を保護した今となっては地球に対する脅威ではなくなった。そのはずだった。まさかムーンレイスがまた襲ってくるとは。
「あっ!? 」
2人の隠れるビルが大きく揺れた。このビルも埴輪に攻撃されたのだ。瓦礫が落ちてくる。いや降り注ぐ。2人はそれに押しつぶされ…
「大丈夫か? 」
気が付くと2人は男に抱き抱えられていた。そのすぐ後ろは瓦礫によって押しつぶされている。彼が助けなければ2人もそうなっていただろう。
「兄ちゃん…」
・・・
危ないところだった。俺は胸に抱いた二人の命の温もりを感じ安堵する。
「血…」
月乃が青い顔で呟く。俺にわき腹の傷に気が付いたのだろう。
「大丈夫。こんなものはかすり傷だ」
俺はそういうと2人を安心させるように笑った。
「兄ちゃん、俺にグリーンデバイスを返してくれ。俺もう一度戦うよ」
「その必要はない」
英雄は果敢にそう言ったが俺は首を振る。ブラックは本星の意志を反映する最強の存在。俺でも地球の科学力でも対抗するのは不可能だ。
「もうお前たちの戦いは終わった。これからは月の女王を、いや月乃を守ってやれ。それが英雄の務めだ」
「でも…」
「俺はヒーローなんだろ? だったら俺を信じろ」
俺はそういうと無造作に英雄の髪をくしゃくしゃとなでた。
「兄ちゃん…」
「イエロー二人を安全な場所に」
「あら、私に頼るの? 私はブラックに逆らえないのに」
イエローは俺がブラックに倒され逃れてからずっとつけていたのは分かっていた。
いつの間にかイエローが壁に寄りかかって俺達を見つめている。いつもの明るい表情とは別にその表情は冷たい。
「英雄とは友達だろ? 」
「…」
イエローは俺と英雄と見比べると「やれやれ」と肩をすくめた。
「ブラックはムーンレイスを我々と同じ進化をたどる種、地球人の侵略にさらされている保護対象と認めた。なら女王は保護しないとね。そのついでに一人くらい保護しても構わないわ」
「姉ちゃん? 一体どういう…」
「英雄は何も知る必要はないわ」
英雄を眠らせるとイエローは優しく彼を抱き留めた。元はと言えば英雄がグリーンとなったのはイエローのきまぐれだった。ヒーローのオタク仲間として仲良くなりピンクがデバイスの予備であるグリーンデバイスを貸した。そこに深い理由はなかった。元々彼女達の集団での役割は突拍子もないことを行い進化に幅を持たせることなのだから。
「お姉ちゃんなんで…」
ついで月乃も眠らせる。
彼女は月の女王、ムーンレイスの頭脳を担当する母体候補の一つだった。その一つである彼女を地球人と思わせることによりムーンレイスを地球人の支配下に置こうという計画で地球人に捕らわれていた。地球人はムーンレイスの女王候補を全て始末したのでその計画は成功したことになる。月乃は自分を救ってくれた英雄を慕っているので人に危害は加えないだろう。これでムーンレイスの問題は解決しただずだった。
「行くの? 」
「ああ」
俺が静かにうなずいた。
「あれがブルーの成れの果てだとしても? 」
「だったら猶更あんな姿をさらしてはおけない」
本来俺達は怒りも憎しみも個性も持たない種族。その性分を逸脱したときの呪いこそがあの姿に他ならない。地球人にピンクを殺されブルーはあの姿に成り果てた。そして5人目、ブラックが目覚めてしまった。いや順序は逆か。ブラックがそうなるよう仕向けたのだ。
「ブルーの姿はブラックの意思でもある。ブラックは既に地球人は滅ぼすべき種族と認めた。ブルーを使って地球人を滅ぼすつもりだわ」
「それは我々が介入してしまったからだ。そうでなければこんな結果にはならなかった」
「最初に目覚めた時のブルーと同じことを言うのね」
イエローが自嘲気味に笑う。
「でもその時のあんたが何と言ったか覚えてる? 逆らえばあんたも裁かれることになる」
ブラックは本星の意志そのものだ。それに逆らうことは許されない。付与された自由意志でどうしようもなく間違ってしまった事を正すのブラックの役割なのだから。
「今度こそ死ぬ事になるわよ? 」
「分かっている」
だが勝算がないわけではない。俺の命を使えば。俺のパーソナリティを集団の意志の中に戻すことができれば…
「どうしてそこまで地球人に入れ込むの? 」
「地球人は我々とは違う種族だ。個人個人で意思がある。個人一人であっても異なる意識が混在している。一人の間違いだけで一つの欠点だけそれをすべて否定することはできない。いや、違うな。そんな理由じゃない」
俺は自分の言葉と自分の気持ちにずれがあることに気が付く。
「私のこと馬鹿にしてたくせに。結局あんたの方が影響されてるじゃない」
イエローが呟いた。
ああ、そうか…
「英雄が俺のことをヒーローと呼んだから、か? 」
俺が地球に来て他者と触れ合いその積み重ねで得たパーソナリティー。集団ではない自我。俺だけの自我。
「私達の自我はこの1年の経験で生まれた積み重ねのないもの。まやかしかもしれないわ」
イエローが諭すように言った。
俺は眠る2人を見つめる。
「だが、それが俺にとっての全てだ」
『レッドチェンジャー』
デバイスが音声を発し俺は赤い戦士へと生まれ変わる。
「馬鹿なんだから…」
イエローはため息をついた。
『ブースト』
ついで赤い鎧の姿へと。
「俺はヒーローらしいからな」
それが俺のパーソナリティだ。
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