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エピローグ
「√」
お父さんは自分でこの道をひたすらまっすぐ歩きなさいと言った。捨てられたことがすぐにわかった。ここまで生かしてくれたことの方が奇跡だと思ったけど、子連れの方がいろいろ警戒されにくいと聞いたこともある。
まっすぐ歩いているといつの間にか、わたしは倒れていたようで、眼を開けるとどこかの部屋だった。白い部屋で白い光が光っている。まわりはたくさんのベッドがあってたくさんの女の子が眠っていた。なんだろう。この景色を見たことがある気がする。そんなはずないのに。
どこからか鐘の音がした。
すぐにベッドから何人かが起き出した。みんながみんなを起こしだす。
「おはよう。ここは身寄りのない子供がいる教会よ」
一人の黒髪の少女が私の前に立った。
「緊張してるの? 大丈夫」
少女は笑って自分の髪を結んでいたリボンをほどいて、わたしの髪に結んだ。つるつるの黒髪にとっても似合っていて、つやもなく長さもふぞろいなぼさぼさのわたしには不格好にちがいないのに、少女は嬉しそうに微笑んだ。
「かわいい」
どうしてだろう。懐かしく、暖かい。
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