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ⅩⅥ 一生のお願い
「▲」
「意外とほんとに見つからないのぉ」
ずっと音がしてる。どこかが破壊される音。
「なでしこ、あの布の魔法はうそじゃろう」
「うん、嘘」
なでしこは素直にすぐにそう答えた。
「わるいこじゃ」
ここはどこかの部屋の中のさらに奥まった物置の中で二人ピッタリと密着している。
「そんなわるいこ、ジャスミンは嫌い?」
猫なで声は甘ったるく物置の中でこもる。
「好きに決まっておろう?」
なでしこはわれの胸に体をくっつけてわれに抱き着く。
遠いところに来た。あの生まれ育った場所は性悪い女ばかりで、女というものにほとほと疲れていたのに、こんな時にこんなところに嘘をついて引っぱりこむ性悪い女に捕まったんだから、女運の悪い人生じゃ。
「ね、ジャスミン、お願い、一生のお願いがあるの」
甘いおねだり声は、一生のお願いのその皮肉さにまるで気づいてないみたいだ。
「キスしていい?」
「本当に、なでしこはかわいい」
こんな場所で、キスしていいなんて、ほとほとあきれる。
それでも、彼女の腰に手を回し体を引き寄せた。
あまりに頭の悪い、性悪い女だが、そうさせてるのはきっとわれで、これがわれの好みということなんじゃろう。
じっと見つめ合って。目を閉じて、唇を寄せ合った。
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