エチュード

A Few Years Later

　本気の恋に落ちたら見える世界が変わるよ、といつの間にか言う側になっていた。
　本気の恋とは、いつもと違う世界を二人に見せる。

　互いの行動は、互いに相手を想い合う気持ちそのものなのだろうかといつも独り想像して、もっと色々互いのことが知りたくなって落ち着かなくなる。

　いつも一緒にいたいからと、気づけば同じ職業に就いていたこと。
　けれど、職場では互いによき同僚としての距離を保つこと。
　代わりに、家に帰ったらたっぷりと愛を確かめ合うこと。
　ネガティブなことを言ってくるものがあれば、それ以上に互いに愛を囁き合うこと。
　毎朝、出かける前には、寝ぐせや眉など互いに身だしなみをチェックし合おうときめたこと。
　どちらかの帰りが遅くなったときは、早く帰宅したほうが先に夕食を作ること。
　たくさん泣いた分、これからは毎日笑顔でいようと、互いを幸せにするための努力を、日々怠らなかったこと。
　なにがあっても傍にいると誓いを立て合い、今日まで本当にずっと一緒だったこと。
　共にいる未来を選択し、心からよかったと思える幸せな一生を全うすること。

　左手の薬指に燦然と輝くそれは、今は互いに揃いのものがついている。

もっと早く、じゃなかったんだ。

あの時だから出逢ったんだ。

好きだ。
好きだ、今もこれからもずっと。

END