10月 1

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「……私ゲイなんですけれど」 「そうでしたか」  桂山は見開いた目を一度瞬いただけだった。実は離婚歴があると聞かされた、くらいの反応である。この人は信用できるかな、と晃嗣は思い始めていた。 「……出会い系アプリやゲイバーで相手を探すのに疲れてしまいまして」  晃嗣は口にしてみて、忙しい営業課長に何てくだらないことを言っているのだろうと、自己嫌悪に陥りそうだった。しかしここ最近、ずっとそのことに悩まされ続けている。  恋人が欲しい。一昨年あたりから、学生時代の友人や会社の同世代に、結婚する者が急増したせいだろうか。日々のことを気兼ねなく話し合えて、しょっちゅうでなくていいので触れ合える相手が、心から欲しい。  ところがここ最近、マッチングアプリでろくな相手に遭遇しない。会うなりホテルに行こうとしたり、やたらと恩着せがましい態度だったり……6月に数回会って好意を抱き始めていた男には、事もあろうに妻と子どもがいた。誰かが垂れこんだのか、サイトの運営側から個別に連絡が来て、彼の会員登録を抹消したといきなり通達された。それで晃嗣は何げに打ちのめされたのだった。 「それは残念でしたね……マッチングアプリじゃなくて直接会うパーティに参加なさるのはどうですか? 参加者の身の上はきっちり調べられていますし、やっとそういう集まりも復活してきていますよ」  桂山にそう言われてみると、晃嗣は果たして自分が今欲しいのは、継続的に交際できる相手なのか、よくわからなくなる。ずっと一緒にいるのも、何となく面倒臭い気がする。  ぼそっと正直な気持ちを話すと、桂山は晃嗣に呆れもせずに、じゃあ、と前置きする。 「今の寂しさをとにかく何とかしたいということでしたら、風俗を使うという手もあります」
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