陰キャ君 恋になる前の物語り

2/17
前へ
/17ページ
次へ
冗談じゃないわよ。 私はね。ブラックコーヒーが飲めないの。 苦いじゃない。せめて微糖にしてよね。 ニコリと笑いながら私の心は、真逆のことを思った。 「素敵」 「クールよね」 「一匹狼って感じ」 影で女たちがそんな風に(はや)し立てる。 そんなわけないでしょう。 私はだた、友達が欲しいだけよ。 ──私の父はサラリーマンの男だった。子供のため妻のため必死で働き家庭を大切にしてきた。 ところが。 私が産まれて間もない頃。母は他に男を作り家を出てしまったのだ。 酷い話しよね。 父は落ち込んだ。 『女など信じない』 そう誓った父は男に走り、なんとオカマの道を選んだのだ。 会社を辞め、オカマバーを経営し、男で一人で私を育てた。 『時雨ちゃん。そんな汚い言葉じゃダメ。もっと柔らかくよ』 『ほほほ。偉いわ。よく出来たわね』 バーの二階が家だったため遊び相手や食事や勉強。相手はいつも従業員のオカマだった。 そうなると。 必然的に言葉遣いや仕草が移るわけで……。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加