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Epilogue
薬師のハネダ先生が、おまえは贅沢だぞ、あんなに総長に大事にされてるのに、バユー先生のところに行こうとしたんだって? と噂をまにうけて言ってきたけど、バユー先生のところのあの度胸のある助手が診察の手伝いをするようになって、あそこも少し繁盛しだしたみたいだ。それでよかったんじゃないかな。あの助手の人何かすごいし。
それからしばらくして総長が、本当にこれは自分のしわざではないと言って変な手紙をくれた。字は汚いしボロ布の繊維でできた安い紙で読みにくいけど、確かに「グレイ殿にお詫び申し上げる」と一行書いてある。何で公用語なんだと思ったら。領主様のところに、僕の知らない人の手で、旅の途中で泊めてもらった修道院の見習い僧に頼まれたと届けられたそうだ。えっと、僕はまた何かへまをしなかったかな? 総長は怒ってないから多分大丈夫だと思うけど。これが総長のねつ造である可能性は低い。だって彼が公用語を読み書きできると知ってるのは僕だけだから。公用語の読み書きって普通の子供にはできないもんなんだ。
よくわからないけど、それで領主様があの時の事情を知ってよくやってくれた、とのお言葉を僕にくれたっていうから、それと一緒に素直に受け取っておく。お言葉より金目のものが欲しかったけど。そう言ったら、総長も子供を使うのに後ろめたさがあるのか、あんまりこんなこと言わない人なのに、僕に耳打ちして、万一自分がはやばや死んだ場合に備えて君が困らないようにはしてあるけど、絶対横取りしようとする者がいるからその時は君んち入ってすぐの床下を掘りなさい、ちょっと高価な女物で胡散臭く思うかもしれないけど、どうせきれいな金なんて無いんだ、それ持って逃げなさい。でも私が生きてるうちは絶対あげられないから絶対掘っては駄目ですと言った。またそんな事言って、それこそ本当かな。そんな事言われたら僕ならすぐ掘り起こしちゃうってわからないのかな。それも見越してお叱りの手紙でも埋めてあるとこまで考えちゃうよ。でも、何で女物? 宝石? 盗品じゃないよね?
まあ、嘘でも本当でもどっちでもいいかな。なにしろ僕は総長に、結構大事にされてるみたいだからね。
<了>
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