俺は俺のために

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「やべぇんだ頼む! お前しかいねえんだ!」  信男は、友人に悲痛な顔でそう懇願された。  友人の名は、浅井誠。彼は今、パチンコに生活費までもを費やしてしまい、ガチの窮地に立たされていた。  一方で、信男はというと、ここ最近競馬で勝ちまくってノリに乗っていた。お金もしばらくはニートで生きていけるぐらいに稼いでいる。 「とはいってもだなあ……」  浅井が今、何をお願いしているのかと言うと。 ——自分の全財産賭けて、勝ってきてくれ!  というものだ。  正直なところ、信男は負ける気がしない。  だからといって、友人の人生を背負うのは荷が重い。 「分け前ならやるから」  どれだけくれるのかを提示され、それがトリガーになった。 「いいだろう。引き受けてやる」  三十二歳の肥満な男は、封筒に入った金を鞄に詰め込んだ。  
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