人魚の通う街

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バーベキューも終わり僕は部屋で夜の海を眺めていた。 月明かりが静かに波を揺らしている。 幼い子供のように気持ちが昂ぶって 眠ることができない僕は昼間の砂浜まで足を伸ばした。 夜の海は静かで何かを吸い取られてしまいそうな浮遊感があった。 大きな月がさざなみをキラキラと瞬かせている。 ・・・満たされていく・・ 胸いっぱいに湿った潮風を吸い込む。 心地のいい風を頬で受けたその時 水面に人影が見えた。 今度は近い。 僕は慎重に海の表面を見つめた。 いた。 僕の胸はざわめいていた。 ・・・人魚だ なんて美しい。 青白く透き通るような肌に、豊かな長い髪 腰から下の鱗は薄いガラスのように繊細で 一枚、一枚、オーロラのように輝きが流れている。 目を離ことが出来ず、凍りついた僕の時は止まっていた。 と、その時 人魚がこちらを向いた。 刹那、僕の心臓は硬く締め上がって軋んだ。 僕を見つめる美しい人魚は さっきまで一緒に会話を楽しんでいた美海だった。
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