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番組が始まると、里中は目をギラギラさせながら、セットの中にいるタレントや芸人の動向を追う。笑いは不自然に生まれてはいけない。
この場ではともかく、そのわざとらしい笑いはテレビを通した目には確実に伝わる。ここぞという、笑いのポイントを待ち、そこで的確に笑うのだ。
番組内でそのポイントが訪れると、里中は目尻を下に落とし、歯をむき出しにして思いっきり笑った。里中の笑い声に釣られ、周りの常連客も大きく笑う。
常連客も、毎回よく笑ってくれる笑い上戸のため、スタッフが里中の周りにあえて配置したものだ。その複数人笑いが呼び水となり、水面に波及する輪のように笑いは観客席に広がっていく。
広がっていくのを確認すると、笑うのを即座に止め、里中は次のポイントを見つけるべく、再び出演者を凝視する。その繰り返しだった。
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