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早くシゴトを終わらせなければならない。
コジローはピッキング道具の入ったリュックを床に置き、ジャーッとチャックを開けた。何でもいい。手当たり次第に金目のモノを盗っていこう。軍手を嵌め、まずは壁際のチェストを一つ一つ覗いていく。
これでも目利きだと自負している。いくつか宝石類を見つけたが、アメジストや屑ダイヤなど、金にならないものばかりだ。現金がどこかにあるはずだ、と嗅覚に従い、鏡台の抽斗に手をかけた。そこで強い抵抗を感じ、鍵が掛かっていることを察した。
この程度の鍵ならすぐに開けられる。リュックからピッキング道具を取り出し、一心集中して鍵を開けた。
抽斗を引くと、銀行の封筒があった。中を見れば二十万円ほど入っている。これだけあれば今日の稼ぎは充分だ。コジローは封筒をリュックに投げ込み、即座に部屋を出ようとした。
だが彼には、泥棒として致命的な欠点があった。臆病で優しく、困っている人を見過ごせない性分なのだ。
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