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「母さん……は、元気?」
陸がぎこちなく聞いてきた。
先程の赤くなった顔はまだ冷めないようで、そっぽ向いたままだ。
「元気だよ」
離婚時の約束のせいで、陸と母親もずっと会えていない。
母は好きで陸を手放したわけではない。
ただ当時の生活力や、父や家の圧力に負けてしまったのだ。
別れた後、ふとした時に陸を思い、母と何度も涙を流した。
「陸は……」
言葉が続かない。
『お母さんに会いたい?』
『離れ離れの間、私の事思い出した?』
聞きたい事、話したい事はたくさんある。
だけど、こんな簡単に口にしていいのか。
離れてから陸がどんな生活をしていたのか、知らない。
母親の事を、恋しいと思っていたのか。
置いて行って許せないと思っていたのか。
離れていた年月が長すぎて。
何も言えなくなってしまった。
「そろそろ、帰るか」
私の様子を察したのか、陸が手早く支度をして支えてくれた。
「そうだね」
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