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「タクシー、拾うか」
金曜日、深夜。
終電逃した同じような人が、タクシーを待っている。
外の空気に当たり、酔いはかなりさめてきた。
「ごめんね、陸。迷惑いっぱいかけて」
「そう思うなら、マジで外飲みには気をつけてくれ。今回、たまたま俺がいたからいいけど、知らないところであんな状態になってるかもと思うと、ゾッとする」
「本当、ごめん。気をつけるね」
程なくタクシーが止まった。
私が乗り込んで、そのまま陸も乗ると思ってたのに、陸は続かなかった。
「陸?」
「俺は次のタクシーに乗るよ。方向が違うから」
「え?」
なんで?
戸惑う私をよそに、陸はタクシーの運転手と何やら言葉を交わした。
「じゃな、亜衣」
「ちょっ、陸⁉︎」
陸が運転手に促して、ドアを閉めさせる。
タクシーはそのまま走り始め、陸の姿はたちまち小さくなっていった。
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