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沈む橙を孕んでいく藍色の夜が好きだった。
だから、火の粉を散らせながら燃え上がる親友の家を見ている時無性に綺麗だと思った。
同時に絶望で泣いていた。
この世界に3人になってしまえばいいと樹が言って、夏夜が笑うのをまた明日目の前でみれるんじゃないかって思ってしまう。
熱い。
消防車と救急車のサイレン、炎の熱気、大人の声、全部夢だってことにしたかった。
飛び込んで火だるまになってしまいたかった。
「…ッ、蛍。行ったらアカン…!」
自分だって涙でぐちゃぐちゃな癖に私の身体と衝動を押さえつけ続けたのは夏夜だった。
ずるかった。
夏夜だって苦しいはずなのに私は振りほどこうとした。
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目次
episode1 _ 橙と藍色
episode2 _ 誘拐
episode3 _ 逆接の逃避行
episode4 _ 虚脱を這って
epilogue _ 痛いカタルシス
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