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タイトルなき願い
【タイトルなき願い/城間遙子】
平らな日々で、坂をのぼった、彼女とふたり、手を繋いで
僕は彼女と、ただ惹かれあい、愛したかった、それだけだった、平らな日々で
君を愛した、僕は愛され、幸せだった、平らな日々で、肩を寄せあい、生きるために
桜に出逢い、散るに急かされ、離れた僕ら、悔やめるかい?
今日も花が、綺麗に咲いて、僕の瞳につき刺さるよ、立ち止まるなと
思い出す影、白黒の花、白黒の君、失った色、失ったもの
僕は出逢った、ひとりの君と、そして笑い、生きるためだけに、ただそのために
かつて彼女は、泣いた、笑った、ただそれだけの希望があった
月光下に開く桜がまた僕を坂のはじめに連れてゆくのか、何のために?
彼女を壊した、この世界は何だ、絶望さえも赦さないのか、何のために?
声も枯れ果て、願いは届かず、立ち尽くす君、見ているだけの僕は何ができる?
もしこのことが事実なのなら、神様は僕に何をくれる?
いま涙さえ枯れ果てている、彼女に神様、何を返すの?
もしこの世界、愛があるなら、どうか彼女に祝福の桜をあげて欲しい
もしこの世界、愛がないなら、神様僕に罰としての鎖を繋いでくれ
ああ、この声よ、届いておくれ、彼女がいつか笑えるように
僕は願うよ、愛のために、彼女がいつか腹の底から叫べるように
また巡り逢い、出逢えるのなら、今度は君を壊さぬように
だから神様、今度は君を、壊さぬよう、壊さないでくれ、どうか神様、願いよ届け。
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