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開幕
高校の同窓会の最中、事件は起きた。
「京子っ!」
参加者の一人、孝也の大声が和やかな空気を切り裂いた。見ると、彼の恋人・京子が獣じみた呻きを上げながら床に倒れ伏している。
孝也の腕に抱かれた彼女の顔はまるで死人のように真っ青だ。
只事じゃない様子に他の参加者も慌てて動き出す。ある者は119番通報を。ある者は施設のフロントに連絡を。
私も急いで京子の元へと駆け寄った。
「大丈夫!? 苦しいの!? 返事して京子!」
京子の目がゆっくりと私を捉える。彼女は何か言いたいのかしばらく口をワナワナと震わせた後、糸の切れた人形のように動かなくなった。
「京子……? 京子ぉ!」
京子は何も答えない。代わりに、孝也の慟哭とその他参加者の半狂乱の叫びだけが、狭い会場内にこだまし続けた。
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