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太郎と言う男
昔、昔。『浦島』と言う田舎の漁村に、『太郎』と言う若者が住んでいた。
漁師の太郎は彫りが深く端正な顔立ちで、潮焼けした浅黒い体は逞しく、村の女たちから絶大な人気を集めていた。
両親は既に他界しており、早く子の顔を見せろなどと口うるさく言う親類もいないため、独り身で気楽な生活を送っている。
今日も朝早くから海に出ていたが、残念ながらなんの収穫もない。いくらかでも獲れれば、その足で売りに行って日銭を稼ぐところだが仕方ない。
少しくらいなら蓄えがあるから、今日の銭が入らないからと言ってすぐ路頭に迷うようなことはない。
(大漁の日も坊主の日もあるさ)
そう思いながら、船小屋に置いてあった握り飯を持って浜辺に出る。そして砂の上にどっかりと座り、海を見ながら頬張る。
三つほど握り飯を食べ満腹になったので、そのまま砂の上に大の字で寝っ転がると、春の朝日が眩しくて気持ちいい。目を閉じて海の音を聞く。
そうしながら、太郎は村の女たちとの情事を思い返す。
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