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わたしは慌てながらアボカドベーコンパンを口に運んだ。けれど、ドキドキして味が分からなかった。あ、ちょっと悔しいぞ。
「そのパン美味しいですか?」
「あ、このパンですか? えっと、急いで食べて味が……アボカドベーコンパンなんですけれど」
「あはは、そんなに急いで食べたんですか?」
男性は柔らかい声で笑う。その声をなぜだか聞いたことがあるな懐かしいなと感じた。初めてあった人のはずなのに。
なんて考えている場合ではなかった。わたしは、アボカドベーコンパンを今度は味わって食べた。
「アボカドがまろやかでベーコンの塩味がピリッとしていてとっても美味しいですよ」
わたしはにっこりと笑い男性の顔を見た。
「そうなんですね。俺も今度、アボカドベーコンパンを食べてみようかな?」
男性はそう言って笑みを浮かべるとえくぼができた。
「是非、食べてみてください。めちゃくちゃ美味しいですよ」
「それはもう食べるしかありませんね」
そう言って笑う男性のことをわたしはやっぱり知っていると思った。
「あの……」
「ん? なんですか?」
わたしは、すーっと深呼吸をしてから口を開いた。
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