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そして、男性は話を続けた。
「あの日、目を合わせないんじゃなくてよく見えてないので目が合わないのかなと思ったんですよ」
「わっ、気づいてもらえていたんですね」
「はい、気づきました。あ、そうだ。自己紹介をしていませんでしたね。俺は丸下光二と言います」
男性こと光二さんはそう言って微笑みを浮かべた。
「わたしは漆島日真莉です。あの時は傘をありがとうございました。ずっと、お礼が言いたかったんですよ」
わたしはお礼が言えて嬉しかった。そして、優しい声とそのえくぼが印象的な笑顔を見ることができて幸せだ。
「いえいえどういたしまして」
「傘をお返ししたいです。この公園にまた来ますか?」
「来ますけど傘は差し上げたので持ってもらったままでもいいですよ」
「でもこの公園にまた来るんでしたらお返したいです」
わたしは、そう言いながらまた会いたいですと心の中で叫んだ。
「あはは、じゃあ返してもらおうかな?」
光二さんはくしゃりと笑った。その笑顔が良いなと思った。
「やった~お返しします。あ、いえ傘をお返しできるので嬉しいです」
わたしは嬉しくて思わず飛び上がりそうになった。
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