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食べられたい
それを見つめてると、心臓がグラングランと波打つ感覚がして
頭が、フワフワとしてくる。
僕も、舐められたい。
チュパッ、チュパッと指のソースを舐めているだけなのに、こんなにもエロを感じさせる。
いやいや、まてまて。
僕は、男を好きじゃない。
僕は、否定するように胃の中にビールを流し込む。
ずっと、さっきの八の優しさが、この胸を貫いていた。
「あー。アカン。きりないわ。手洗ってくるわ。」
手首に垂れたソースを、ペロンっと舐めた八はそう言って立ち上がった。
「なにしてんの?」
「あっ…」
僕は、とっさに掴まえた八のその指を口に含んでしまった。
「九、酔っぱらったん?」
若ではなく、九と呼ばれた事に胸が締め付けられた。
「ごめん」
指を離した。
「食べる?」
「えっ?」
僕の手にしていたハンバーガーを八は、手で少しちぎった。
ソースが、溢れて八の手を汚す。
「あーんして」
僕は、八に言われて口を開いた。
八は、ゆっくりと優しく口にハンバーガーをいれた。
「ゆっくり、味わって」
八の優しい眼差しに、僕は見下ろされていた。
モゴモゴと噛んで飲み込んだ口の中を八は、指で優しくこじ開けた。
「九の顔、エロいな」
そう言って、指を上下に擦られる。
「嫌やのに、ごめんな」
抜こうとする指をハムって、唇で噛む。
ジュッポとイヤらしい音が、耳の中に響いた。
「やらしいな。九」
そう言われて、全身がゾクゾクする。
下半身が、ジンジンと熱を持つのを感じる。
あー。
僕、今、八に感じてるんだ。
もう、男とか女とか、どうでもよくなった。
ただ、八の全てを口におさめてしまいたい衝動を押さえられなかった。
八は、僕の口から指をゆっくりと抜いた。
ジュルッと音を立てて抜かれた、指の隙間と僕の口の端から涎が垂れた。
八は、僕の涎でベタベタな手で気にせずにハンバーガーを掴んだ。
ドクッドクッと心臓が早くなる。
まるで、僕が食べられているような気になってしまった。
ハンバーガーを胃袋に全ておさめた八は、また指をチュパッ、チュパッと舐める。
僕は、その光景にハンバーガーを握りしめてしまった。
「ソースついてしもたで」
八は、躊躇うことなくソースでベタベタになった僕の指を口に含んだ。
何してんの?やめて何て言葉は、浮かばなくて…。
八の舌を指でつまんだり、クルクルと回したり、指を上下に舐めさせたりを八に繰り返させた。
「ごめん」
ジュルッと音を立てて、指を引き抜いた。
八も口から涎を垂らした。
僕も、さっき八がやったように気にしないフリをしてハンバーガーを胃袋におさめた。
チュパッ、チュパッて音を立てながら指を舐めてると八が、僕の隣に座った。
「セーター染みなるわ」
「えっ?」
「ほら、袖についてる。洗面所で洗うわ」
八は、そう言って僕の手をハンバーガーについていたナプキンで綺麗に拭き取る。
どうして、ここまで優しいのだろうか?
八は、僕からセーターを脱がす。
「風邪ひいたアカンから、これきとき」
八は、羽織ってるカッターシャツを僕にかけてセーターを持って行った。
キスを期待していた自分に驚いていた。
隣に座った八が、兄に言ったように「キスせーへん?」と言ってくれる気がしていた僕は、心底ガッカリしていた。
ここまでの流れでなら、押し倒されていてもおかしくないではないか…
僕は、兄の日記を開いた。
適当に、目についたページで止めた。
【八との10回目のデート。ハンバーガーを買って、ラブホにきた。八は、俺の手についたハンバーガーのソースを舐めてくれる。指だけで、気持ちよかった。八に全身舐められてしまいたい。俺も八に同じことをした。八は、その手で何の躊躇いもなくハンバーガーを食べる。ドキドキする。この日までに、何度もキスをした。抱かれたい。このまま、八のも】
パタン…。
読みたくなくて、日記を閉じた。
僕は、八がもどってくる前にホテルのフロントさんに一人帰る事を告げた。
これ以上、八といたくなかった。
「乾くまで、ちょっとかかるわ」
八は、セーターを洗ってもどってきた。
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