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バトル・トラップ
◆
振動。
床や壁を通して伝わり、近付いて来るのがわかる。
震えはやがて、“音”として認識され始める。
俺は、壁に付けていた耳を離して身を起こした。
ここははるか昔栄えていたという王国の神殿の遺跡だった。
深い森の奥に隠れるように存在し、おかげで発見されたのは比較的最近の事である。
しかもなかなか厄介な遺跡らしく、まだ探索しつくされてはいない――つまりお宝が残っている可能性が高いという事だ。
ならば盗賊たる者、ライバル達に後れを取るまいと早速やってきたのだが、案の定、探索が一筋縄ではいかない事を思い知らされている真っ最中である。
俺が立っているのは長い階段の中間点よりやや上方。
階下には、先が見通せない程、長く真っ直ぐな通路が伸び、一方、階段を昇り切った先には、通路とほぼ同サイズの大きな扉が行く手を塞ぐ。
通路の幅は、大人二人が楽に通れる位で、遺跡の古さ故だろうか、壁には所々に亀裂――中には、人が潜り込める程のものもある――が、走っている。
先程から空気を震わせている“音”は、階下の通路の向こう側、暗がりの中から聞こえていた。
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