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――これからどうする……?
空はすでに薄暗く、街に着く前に夜になってしまうだろう。
かといって、このままここで一夜を過ごすのも、万全ではない今の状態では正直不安が残る。
「……まいったな……」
ため息をついて、俺はとりあえず毒消しを使おうと、腰の道具袋の辺りを探った。
その拍子に、ポケットから唯一の戦利品である宝珠が転がり出る。
ゆらゆらと揺れる穏やかな光が、少しは気分を落ち着かせる。
他に光源はないはずなのに、溢れ出すこの光は、宝珠自体が光っているのだろうか?
ふと気がつくと、俺は宝珠の淡い光に包まれていた。
不思議な事に、今まで感じていた痛みも、疲れさえも、いつの間にか薄れて消えてゆく。
やがて、役目を終えたかのように、宝珠の輝きは弱まり、元の静かな色を残すだけとなった。
我に返った俺は、慌てて左足の包帯を取ってみた。
傷は綺麗さっぱり消えている。二の腕も同様だ。
「癒しの力があったのか」
確信した途端、思わず口元が緩んだ。
これだけの逸品、高く売れるに違いない。
十分な収穫に満足し、俺は街への帰路についた。
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