4人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
少なくはない複数の足音と、時折、それに混じる獣の声。
そして、奴らの姿が見えた。
直立二足歩行する犬頭のモンスター、十数匹のコボルドの集団だ。
そう、これが探索を手間取らせ理由の一つ。
かつての繁栄はどこへやら、神殿はすっかり魔物の巣窟と化していたのだ。
そのうち向こうも俺の姿を見つけたらしく、さらに速度を上げ迫って来る。
最弱の部類のモンスターではあるが、なんせ、数が多い。
多少、腕に覚えがあるといっても、盗賊の俺は、戦闘の専門家じゃあないんだ。
まともにぶつかっては、正直、分が悪い。
奴らもそれを承知だから、ここまでしつこく追って来るのだろう。
上の扉は、ワケあってまだ開けられないし、通路は長い一本道で、逃げ道などない。
――お互い様、だけどな。
俺は、右手の『切り札』を握りしめた。
コボルドたちは、目前にまで迫っている。
――でも、まだだ。あと、もう少し……
武器らしい武器も持たず、動かない俺を見て、奴らはますます勢いづいて、声を上げる。
最初のコメントを投稿しよう!