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第二雨
雨の日が特別好きというわけではないが、嫌いでもない。雨を見上げていると心の中が空になって行くような気分がすると共に、心の奥から何かが引っ張り出されようとしているような、不思議な気分になる。
すみません。
ふと、音楽の向こうから声がした。見ると、雨に打たれた女子が、フードを被ったおばさんに話しかけている。この女子はどこかで、と気憶を辿って、前に雨の中から僕を見つめた女子だ、と思い出した。今日も傘を持っているのに濡れていたが、今回持っている傘は折り畳みの物らしい。こっそり音楽のボリュームを下げる。
「急いでるんだけど……」
「引き止めてしまってすみません。私の傘に入りませんか」
「え、悪いよ、あなた濡れてるでしょ、あなたがさしたら?」
「いえ、一緒にということです」
「え? 折り畳み小さそうだし、気持ちだけで十分だから、風邪ひかないでね」
おばさんはそう言うと走って行った。普通の反応だとはわかるのだが、残された彼女がまるで雨の中のダンボールにいる子猫のようでいたたまれない。今日は突然の雨だったので傘を持っていない人も多い。が。彼女と目が合う。彼女は僕の手の中にある折り畳み傘を見ると、口を引き締めて歩いて行った。
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