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和威の家族
「和、諦めや?な?」
「でも……」
「和は嫌なんか?」
さっき、夕飯のあと。
和の家族を紹介してもろうた。
和のおばあちゃんの和代さん。
おばあちゃん80歳なんやて。
めっちゃ元気やな言うたら……。
『和の友達は口がうまいんやね』
『え?』
『ばあちゃんは大阪出身だから』
『ほんまか?』
『和、おばあちゃんにお友達紹介してくれんの?』
『木村貴史。一応芸能人』
『挨拶が遅れてすんません。木村貴史言います』
『冷蔵庫に入ってるケーキみんなで食べて』
『土産いらん。言うたやろ?』
『それ、俺も言ったけど。貴史がどうしてもって』
どうしてもって。
恋人の実家に行くんやで?
手ぶらで行けるか!
『木村さん。私、あなたの大ファンなんやで』
それは聞いとったから知っとたけどな。
『和。お前は結婚はせんのか?』
『……うん。相手いないし』
……和。
和は家族に言ってないんやったな。
バーで飲んでた時に。
"俺の家族は俺がゲイって知らないから"って。
淋しそうな顔して話しとったな。
『母さん。和威もそのうちに、な?』
『私はてっきり木村さんと一緒になるから連れてきたんかと思うたわ』
『!?』
親は子供のことをわかっとるんやね。
和の場合は孫やけど。
『ば、ばあちゃん?』
『はっきり言うわん奴はばあちゃんは嫌いや』
『あっばあちゃん!』
『私は仕事に戻る!』
和のばあちゃんは和が女の子に好意持てんのを知っとたんと思う。
おじさん夫婦に風呂入ってきてえぇ言うから入って。
で、和をなんとかなだめて。
今に至るちゅーわけ。
なんやけど。
「和。おばあちゃんはきっと全部知っとると思うで?和から言ってほしいんやと思う」
「でも……」
「俺もおるから。な?」
俺たちは明日おばあちゃんに話すことにした。
「ばあちゃん。あのさ、俺さ女の子には興味ないんだ。で、今、こいつと木村貴史と付き合ってる」
「よう言うたな」
「?ばあちゃん?」
「ばあちゃんは気づいとったからな」
「え……」
「それにお前たちお揃いの指輪しとるんやから嫌でもわかるで?」
「木村さん。和威は表現するのが下手な子です。どうかよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
そう言って和のおばあちゃんは肩の荷が降りたといいながら呟いとった。
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