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別れよう〜和威サイド〜
中学生の時まで俺は小児喘息を患っていた。
まさか。
大人になって喘息を再発させるとは思わなかった。
ごくまれに大人になってから再発する場合があるらしい。
地方のイベントやゲーム発売イベントで忙しくあっちこっち回っていた時。
急に息苦しくなった。
何だ。
急に息苦しくなってきた。
あ、これ。
ヤバイ。
喘息!?
治ったんじゃ。
救急車で運ばれた。
「間違いないですね。喘息ですね」
くそ。
よりによって地方にいる時に。
何日か苦しくて貴史にメールも電話もできないでいた。
チアノーゼが出る1歩手前ぐらいだったらしいし。
そして。
退院して落ち着いたから現場に向かった。
「おはようございます」
「あ、遊佐さん。おはようございます!体調いいんですか?」
「お陰様で。監督は?」
監督のもとに行き謝罪を。
「監督、おはようございます。遊佐です、今、いいですか?」
「遊佐くん、入っておいで」
「監督。すいません」
「もしかして喘息で何日もズレちゃったこと?遊佐くんとこの社長から聞いてるよ」
監督には気にすんなって言われた。
それから4日後。
貴史からメールがきた。
「話しがあるんやけど時間取れへんか?」って。
「明日までイベントで明後日帰ってくるから」
『なら、明後日の夜話しするから家にいてや』
そうメールが返ってきた。
話しがあるから。
なんだろう?
俺なんかしたっけ?
「さて帰るから」
事務所からは今週はゆっくり休みなさいと言われ休みを入れられた。
「ただいまー」
貴史はまだか。
じゃあ久々に飯作るか。
「喜んでくれるかな」
貴史は俺が作る特に煮物が好き。
「ジャガイモ、里芋ーある。肉は冷凍してたよな」
じゃあ作るかな。
「よし!完璧」
こういう時、ばあちゃんに料理教わって良かったって思う。
俺は両親がいない。
ばあちゃんに育てられた。
ばあちゃんは色々教えてくれた。
料理もばあちゃんから教わった。
『男でも家事できんとモテんで?』
ばあちゃんはいつもそう言っていた。
「ただいまー」
ちょうど帰ってきたな。
「貴史、おかえり」
「もう帰っとたん?」
「早めに帰って来れたから」
「いいにおい。なんか作っとった?」
「あぁ。肉じゃがと味噌汁とほうれん草の胡麻和えとサラダ」
貴史。
煮物好きだろう?
「腹減ったし和の作ったの食いたい」
「じゃあ持ってくるから。手洗って来いよ」
手洗ってきた貴史が声をあげていた。
「おぉっ。相変わらず美味そうやな」
「お世辞はいいから食えよ」
「お世辞じゃないんよ?」
「いいからっ!」
褒められることに俺は慣れてない。
だから。
褒められると顔が赤くなってしまう。
「あー久々の和の飯美味かった」
嫌なことは早く終わらせたい。
だから。
俺は貴史に聞いた。
「なぁ、話って?」
少しの沈黙のあと、
貴史が口を開いた。
「……和。俺たち別れよう?」
ここで引き止めれたらいいのに。
「わかった」
俺はそれを受け入れてしまった。
「早めに出ていくからすこしだけいさせてな」
ここは貴史の家。
そこで俺たちは一緒に暮らしていた。
明日から不動産屋通いか。
「次住むんが見つかるまでいてくれてえぇから」
「今日は疲れたから寝るな」
俺は部屋に逃げた。
愛想尽かされていたのか。
俺だけが貴史恋人でいたのか。
そう、だよな。
貴史はイケメンの俳優だし。
わざわざ同じ男の俺になんか本気になるわけないんだ。
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